しかし、サウジアラビアで起きているような変化は、これまで見たことがないように思う。ソビエト連邦の崩壊や、最近スリランカで見られたような激変とは違う。サウジアラビアの変化は、意図的であり、深く、劇的である。
サウジアラビアを訪れると、多くの先入観や固定観念、偏見が入り混じり、何を期待しているのかわからなくなる。この国は過去50年間、自らを外界から遮断し、最近までメッカへの宗教的な巡礼でない限り、誰もが訪れることが困難な国だったのだ。
女性は完全に覆われ、ベールを被らなければならず、男女の混血は禁止され、宗教警察が強権的で妥協を許さないという話は聞いたことがある。正直なところ、欧米の観光客がこの地に休暇を過ごそうと思っても、それは驚くべきことだろう。
このような抑圧的な環境では、楽しい時間を過ごすことは難しい。そこで、国の指導者が新鮮な空気を吹き込む決定を下したことで、国全体が一変した。その一環として、サウジアラビアは膨大な資金を投入して、新しい都市や観光地を建設している。今のサウジアラビアにあるのは、ただひとつ、猛スピードの変化だけだ。
この変化の背後にいる人物、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(通称MBS)について語らずして、この先を進むことはできないだろう。そして、MBSを語るには、彼が巻き起こす論争を抜きにしては語れない。